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肝臓グループ

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臨床研究

(1)C型慢性肝疾患に対する抗ウイルス療法

 C型慢性肝臓病に対する抗ウイルス療法は日進月歩であり、従来難治性と言われていたセロタイプ1型C型慢性肝臓病に対しては、IFNを使わない飲み薬だけの12週間治療(ソフォスブビル/レディパスビル併用療法、オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル併用療法)が行われ、副作用が少ない治療法でほぼ100%のウイルス消失率が得られるようになりました。セロタイプ2型の患者さんに対しても、IFNを使わない飲み薬だけの12週間治療(ソフォスブビル/リバビリン併用療法)が97%のウイルス消失率が得られています。しかし、耐性変異を持ったウイルスを持った患者さんが一部におられることが分かっていますので、岡山大学消化器内科との共同研究により、治療前にC型肝炎ウイルス遺伝子変異を測定し、個々の患者さんにあった個別化治療を実践することによって、より高い治療効果を目指しています。また、山陰両県の基幹関連施設を含めた多施設共同研究を行い、C型慢性肝臓病治療に関する新たな知見を見出すことや治療の均霑化に取り組んでいます。また、ウイルス消失後の肝機能の改善、門脈圧亢進症、発癌の抑制についての検討も行っています。


(2)肝細胞癌治療後の患者さんに対する抗ウイルス療法

 慢性肝臓病患者さんに対する抗ウイルス療法は、肝病変の進行を抑えるとともに肝細胞癌の発生を抑制することが分かってきました。当科では肝細胞癌治療後の根治患者さんに対して、C型慢性肝臓病では直接作用型抗ウイルス療法、B型慢性肝臓病では核酸アナログ製剤(エンテカビル、テノフォビル)の投与によって、肝細胞癌の再発が有意に抑えられ肝予備能も改善するかどうかを、山陰地区の多施設関連病院を含めてその有効性を検証しています。


(3)肝硬変症患者における肝性脳症早期診断法の開発

 肝性脳症は進行した肝硬変患者さんに発症する重篤な合併症です。肝性脳症を早期に診断することによって、発症前に適切な治療が可能となります。当科では潜在性脳症と呼ばれている発症前の病態を診断するためにコンピュータを用いた脳機能評価、フリッカー試験による診断法の開発を進めています。


(4)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の診断と治療法の開発

 従来NAFLDは単なる脂肪肝として重篤な疾患とは考えられていませんでした。しかし、NAFLDの一部である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変、肝癌と進展することが明らかとなり、近年増加傾向にあることもわかってきました。当科ではNAFLDからNASHを鑑別するための新しい血清マーカーとしてmicroRNAの検討を行い、効率的にNASHを診断する方法を検討しています。さらにNASHやNAFLDの内臓肥満との関連を調べるとともに、治療効果の推移を血清マーカー、腹部超音波検査による内臓脂肪の評価によって行っています。


(5)肝細胞癌の早期診断と肝炎ウイルス陽性者の掘り起こしの取り組み

 従来、肝細胞癌の約90%はB型肝炎およびC型肝炎ウイルスが原因であり、これらのウイルス陽性者(キャリア)は肝細胞癌の高危険群であることから、定期的(危険度に応じて3ケ月~6ケ月毎)に腫瘍マーカー測定(AFP、PIVKA-II)や画像検査(腹部超音波、ダイナミックCT、EOB-MRI等)で経過観察(サーベイランス)を行うことにより、肝細胞癌の早期発見が可能であり、日本肝臓学会のガイドラインでも肝発癌高危険群に対するサーベイランスが推奨されています。当科では、肝細胞癌の高危険群であるB型とC慢性肝臓病患者さんを、サーベイランスガイドラインに沿って厳重に経過観察を行うことにより肝細胞癌の早期診断を行い、生命予後の改善に繋げるべく日々努力しています。当院だけではなく鳥取県内の主な医療機関、鳥取県健康対策協議会、鳥取県肝疾患相談センターとも協力して、肝発癌高危険群に対するサーベイランスが守られるように対策を行っています。また、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していることを知らずいきなり肝細胞癌と診断される患者さんも多いため、米子保健所や鳥取県肝疾患相談センターとも連携して肝炎陽性患者さんの掘り起こしや市民向け講演会による啓発活動を定期的に行っています。  一方、B型とC型肝炎ウイルスがともに陰性にもかかわらず肝細胞癌が発生する非B非C型の肝細胞癌が全国に増加しており、鳥取県もその例外ではありません。非B非C型の場合、肝細胞癌の発生に留意した定期的な検査が行われていることは少ないため、しばしば進行した状態で肝細胞癌が見つかります。非B非C型の肝細胞癌の原因として、アルコール、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、過去のB型肝炎ウイルス感染、糖尿病等が推測されていますが、まだ明確となっていません。当科では、非B非C型の肝細胞癌患者さんに共通の特徴がないかを検討し、非B非C型の肝細胞癌を早期診断できる患者さんが増加することを目指しています。


(6)造影超音波(CEUS)、CT、MRIによる肝細胞癌診断・サーベイランスの研究

 早期の肝細胞癌発見のために最も重要な検査は画像診断です。肝細胞癌高危険群の患者さんに対する早期診断に最も効果的なスクリーニング法を研究するとともに、効率的な質診断および治療後の経過観察のためのモニタリング法を研究しています。これらの開発により、肝細胞癌の早期発見、早期治療により生存率が向上することを目指しています。


(7)肝細胞癌治療法についての臨床研究

1.小肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA) 小肝細胞癌に対する治療はエタノール注入療法から、より根治性の高いラジオ波焼灼療法(RFA)へ移行しています。しかし、その治療効果、生存率の改善効果については未だ十分に検討されていません。当科では、RFAの短期・長期の治療効果を検討するとともに、肝予備能へ与える影響を検討しています。より効率的にRFAを行うために人工胸水下、人工腹水下あるいはCT下RFA等の工夫も行っています。また、CEUSやCT、MRI、超音波とのfusion画像を用いて、より精度の高い治療を行っています。さらに、RFAが高い根治性をもって行われたかどうかを調べるために、MRI造影剤(SPIO、EOB)を用いたablative marginの評価法を開発しています。さらに3D/4D超音波を用いた治療効果予測も研究しており、できるだけ患者さんに負担をかけない治療法を工夫しています。

2.進行肝細胞癌に対するリザーバーポートを用いた動注化学療法 RFAや肝動脈塞栓術(TAE)の適応とならない高度進行肝細胞癌患者さんに対して、埋め込み式のリザーバーポートを用いて各種の抗癌剤による化学療法を行っています。これにより、従来治療効果の期待できなかった患者さんに対しても、生存率の改善が得られています。今後さらに抗癌剤の組み合わせを工夫し、患者さんごとの薬剤感受性を遺伝子多型の面から検討して、テーラーメード医療を目指しています。また、新しく登場した分子標的治療薬(ソラフェニブ)も積極的に用いて新しい治療体系の確立を目指しています。


(8)慢性肝炎に対する線維化診断法の開発

 慢性肝炎における線維化の診断には肝生検が推奨されていますが、肝生検は侵襲的な検査法であり繰り返し行うことは困難です。当科では以前より線維化の診断に、非侵襲的な血清マーカー(IV型コラーゲン、7Sコラーゲン、ヒアルロン酸、PIIIP等)測定が有用であることを報告してきました。また、最近では通常の肝機能検査から線維化の程度を推定するFibroIndexを作成し、これは日本消化器病学会肝硬変診療ガイドラインにも取り上げられています。FibroIndexは抗ウイルス治療や肝庇護療法の治療効果の経過観察に有用です。現在、さらにFibroIndexによる肝発癌予測が可能かを検討しています。また、低侵襲検査法として3種類の肝硬変測定装置(Fibroscan、Real time tissue elastography、VTQ)を用いて線維化診断、肝発癌予測への有用性を検討しています。


(9)肝性腹水胸水に対する治療法の開発

肝硬変に伴う腹水は患者のQOL(quality of life)を著しく低下させます。腹水に対しては従来の利尿剤治療に加えて新しい利尿剤であるトルバプタンを用いて治療効果の向上を図っています。また、肝性胸水に対しては造影超音波を用いて横隔膜交通症の診断を行い、交通症の患者に対しては胸腔鏡下手術によって胸水消失が得られています。


(10)肝硬変患者に対する栄養療法

肝硬変患者では蛋白/カロリー低栄養が存在し、予後の悪化の原因となっています。また、この低栄養によってサルコペニア(筋肉の萎縮)が進行します。当科では、分岐鎖アミノ酸やカルニチン、亜鉛など肝硬変の患者の生存率の改善を目指して積極的に栄養療法を行っています。


基礎研究

(1)ラットの肝細胞癌モデルを用いた肝細胞癌予防や治療薬物の探求

 抗癌剤とは異なり副作用が少なく体にやさしい薬物(フィトケミカル)を使って肝細胞癌を予防あるいは治療する方法を、肝癌培養細胞や動物を用いて基礎的に研究しています。Diethylnitrosamine (DEN)という薬物をラットに腹腔内投与すると、ヒトに類似した肝細胞癌ができます。このラット肝細胞癌モデルに対して、カフェイン、ウコン、クルクミン、シリマリン、ゲラニオール等のフィトケミカルを投与して、ラットの肝細胞癌の予防効果を検討しています。将来的には、ヒトへの応用可能なフィトケミカルを見出したいと考えています。


(2)microRNAによる脂肪肝、脂肪肝炎の診断法の開発

 1998年に初めて発見されたRNA干渉は、二重鎖RNAを細胞内に取り込ませることで、その相補的(配列が正反対で、お互いを補完し合うような)配列を持つメッセンジャーRNAだけを減少させ、その結果細胞の構造や機能に様々な変化を起こすことができる現象です。正常マウス、脂肪肝モデルマウスを用いて、網羅的にmicroRNAの発現を調べ、脂肪肝、脂肪肝炎を診断するのに有用なmicroRNAを検討しています。新たに見出したmicroRNAがヒトの脂肪肝、脂肪肝炎診断にも有用かをさらに検討しています。また、選択されたmicroRNAは脂肪肝、脂肪肝炎の発症にも深く関与していると考えられるため、その病態も研究しています。


(3)肝線維化治療薬の開発

 ラット実験的肝線維化モデルを用い、線維化治療薬の開発およびその作用機序の解明に取り組んでいます。特にレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系阻害剤を中心に検討を行い、その有用性を報告しています。一部の薬剤は既に臨床応用も行い、有効であることを報告しています。


(4)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症機序の解明と治療薬の開発

 ヒトのNASHに近い肝線維化を伴う動物モデルは少ないのですが、我々が用いているFLS-ob/obマウスは高度の脂肪肝と肝の線維化を伴い、長期には肝細胞癌も発生することからヒトNASHの自然経過に極めて類似しています。このFLS-ob/obマウスを用いて、酸化ストレスやクッパー細胞を含めたNASHの進展機序の解明を行っています。また、NASHの治療法としてアンギオテンシン系阻害剤やコレステロール吸収阻害剤および各種の糖尿病治療薬の有効性を、このマウスを用いて検討しています。





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