ANNIVERSARY

高まる期待に応えるため、
地道に実行し続ける。
そして、未来につなぐ医療を。

鳥取大学医学部は2020年に創立75周年を迎えました。第二内科は私を含め5代の教授と教室員の先生達の尽力で発展してきた歴史のある教室であり、医学教育・研究・診療の中核を形成して社会的使命を果たしてきました。鳥取県内はもとより山陰地方を包括して広域な医療圏を支え、数多くの内科医やプライマリーケアを担う人材を輩出しています。いにしえに老年病学の礎を築き、かつて呼吸器内科や血液内科の母体となり、鳥取大学の数ある診療科の中でも最多の同門会員が所属しています。現在は第二内科診療科群として消化器内科・腎臓内科を担い、山陰地方最大級の医局の1つとなっています。

開講100年を迎え2050年代の近未来は、超高齢化に一層の拍車がかかると同時に明らかな生産人口減少に向かい、日本の高齢化社会の縮図である鳥取県では幾多の医療問題を抱えている懸念があります。消化器がんや難治性病態に至ってしまった患者さんが高齢や慢性腎臓病をはじめとする併存疾患による臓器機能や社会的認知活動の低下などを理由に手術など侵襲的な治療をできなくなるケースも増えて、我々消化器内科医による内視鏡治療の必要性が益々高まり、放射線治療や薬物療法など様々な内科的治療のハイブリット化が進んでいくものと思います。一方で、さらに時空を超えて22世紀までには、消化器病学サイエンスの英知の結集により、だれでも超早期の消化器がんを非侵襲的に発見でき、診断と治療が同時にでき、さらにがんの発症そのものを予測して先制予防ができるような消化器がんフリーの人生100年を過ごす健康長寿社会が到来しているかもしれません。喫緊には全世界的に展開が始まっているいわゆるスマートホスピタルに対応できる診療・教育体制の整備も必要です。そのために先ず、情報通信技術や人工知能による内視鏡教育への活用や臨床実用に着手し、臨床オルガノイドなどを実装したオーダーメードの精密医療に精通し、代謝オミックスなどのビッグデータ、バイオインフォマティクスを自在に駆使できるなど、山陰の地にあっても次代の消化器内科医像のモデルケースになりうる多種多彩な人財の登場に期待しているところです。

臓器関連ネットワークの本拠地として食と排泄に関わる最も重要な消化器・腎臓内科学の本講座に寄せられる期待は益々大きくなっていくと思います。しかし、保険制度、専門医制度、大学改革など流動する厳しい環境の中で、情報に翻弄されることなくやるべきことを見定め、地道に実行することが教室運営の基盤です。

1.目の前に患者さんがいること
真摯かつ質の高い医療の提供
2.医学は科学であること
医学研究(臨床・基礎)の推進
3.後進を育てること
次世代を担う若者のリクルートと育成

教室員は次世代医療、医学の発展を担う財産であることを認識して、私は脇役に徹し将来を担う若い力を最大限引き出し伸ばすことができるよう助力したいと思います。 今後もどうぞよろしくお願い申し上げます。