DIGESTIVE

最新医療機器で
早期発見・迅速治療。

食道、胃、大腸にいたる消化管に関する疾患の診断と治療を行っています。最新の多種多様な内視鏡診療機器を駆使し、消化管疾患の早期発見から迅速に治療につなげられるよう尽力しています。早期食道癌、胃癌、大腸癌に対する新しい内視鏡的切除術である、内視鏡的粘膜下組織剥離術も積極的に行っております。安全で質の高い医療を患者さんに提供できる環境が整っています。

1.

消化管グループでは咽頭、食道、胃、小腸、大腸、直腸肛門における良性疾患、悪性疾患を対象としています。特に専門治療を要する病気の診療が中心となっており、炎症性腸疾患診療、早期消化器がん(特に難治性)の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などを積極的に行っております。
また、安全面においては合併症予防のため、二酸化炭素送気などを用いています。県内随一の最新鋭の内視鏡診療機器を活用し質の高い診療を患者様に提供できる体制となっています。内視鏡治療の適応範囲は益々広がっており、数ミリの微小な癌~10センチ長径を超える広範な早期癌、外科領域との協業を含めた粘膜下層~筋層に及ぶ病変など、我々消化器内科医の活躍の場は未来に広く深くボーダレスに発展しています。

2.

「より早く、より確実に」高水準かつ身体的な負担の少なく安全な診療を行っています。早期消化管腫瘍の早期発見、最適の治療方針を決めるための高精細な診断技能、低侵襲な内視鏡治療を提供します。炎症性腸疾患の診療には個々の患者さんの病状や希望に応じ最適な薬物治療を行っています。進行がんの患者さんに安心確実な治療を提供できるようチーム医療や横断的診療を目指しています。

3.

臨床だけでなく、消化器疾患の診断・治療における新知見の研究を行っています。
目の前の疾患に対する診療はもちろんですが、消化器疾患の診断・治療におけるあらたな知見の開拓にも日夜努めています。昭和大学江東豊洲病院、東京慈恵会医科大学、東京大学、東京女子医科大学、福岡大学、長崎大学など様々な施設と共同研究を行っています。
 
以下に実例として①炎症性腸疾患、②内視鏡治療の2つの診療について記載しています。

炎症性腸疾患(IBD)について(バイオ・治験・GCAP)

炎症性腸疾患(IBD)とは、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病などの総称でIBDと言われます。国内の患者数が年々増加しおり、若年者から高齢者まで発症する未だ原因不明な指定難病です。潰瘍性大腸炎は国内患者数が20万人を越え、いわゆる難病のなかで最多の患者数となっています。
IBDの特徴は病状が患者さん個人個人によって多様性があることです。当科はIBD診療に豊富な経験を持つ複数の専門医が外来しており、患者さん個々の状態に合わせて、適切な検査、治療を提供できる体制を整え、患者さんのより豊かな日常を取り戻すことを願い診療を行っています。
またIBDに対しては近年新規治療薬の開発が目覚ましく進んでいます。炎症性腸疾患の治療は薬の開発により多岐にわたっていますが、最新情報に基づいた生物学的製剤(バイオ)を適切に用いた治療を提供しています。新規有望な薬剤の治験にも参加しています。
当科のIBD治療の特徴として、第二内科診療科群に腎臓グループが血液浄化療部(透析室)でGCAP(顆粒球除去療法)を行うことができます。このように、アクセスが大変よく円滑で迅速なチーム医療を行えるのが強みです。
*毎週月曜日に磯本教授による炎症性腸疾患専門外来を行っています。お困りの方がおられたら、是非ご相談ください。

内視鏡治療(高難度ESD、PDT、POEM)について

消化管がんに対するESDは患者さんの身体的負担が少なく、根治が狙える内視鏡治療です。当科では他院で治療が難しいと予想された高難度症例に対しても積極的にESDを施行しております。年間のESD件数は現在200件を超え、安全、安心な治療を提供できます。咽頭や直腸肛門領域の病変に対するESDも経験していますので、適用患者さんのご紹介を受け入れています。

〈10cm以上の大きさがある早期胃がんに対するESD症例〉

ESD治療前
病変は10cm以上の広範な病変
ESD治療後
一括切除
切除標本
早期胃がんで治癒切除となった

〈外科手術を回避できた巨大な早期大腸がん対するESD症例〉

ESD治療前
大腸の管腔を占める巨大病変
ESD治療後
一括切除
切除標本
治癒切除となり、外科手術を回避

食道アカラシアとは食道の神経に異常を認め、食べ物を飲み込んでもつかえる、口の中への逆流する、胸痛、誤嚥性肺炎などの症状を生じる原因不明の疾患です。治療法としては薬物療法、バルーン拡張術、外科手術が行われてきましたが、2008年に昭和大学江東豊洲病院の消化器センター長 井上晴洋教授が「POEM (ポエム)」と呼ばれる内視鏡治療を開発しました。POEMは従来のバルーン拡張術に比べて有効性が高く、外科手術よりも低侵襲であり、その優れた治療効果と安全性から2016年4月から保険適応となりました。当院でもこの治療法の開発者である井上晴洋先生の協力の下で研鑽を積んだ専門医3名が在籍しており、山陰地方で1例目となるPOEMを2017年に行い、現在まで40症例以上を経験しています。近赤外光内視鏡を取り入れた独自の治療の工夫もおこなっています。
 
*下記にアカラシアの説明動画がアップされています。ご参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=AaXHM4dKT5M&t=9s

POEM治療前
食道内圧検査にてType1のアカラシアと診断
POEM治療中
内視鏡的筋層切開術を施工
POEM後
症状改善

食道がんの治療には、内視鏡治療、外科治療、化学療法、放射線療法があり、これらを組み合わせて治療を行います。最近では高齢化により、外科手術が難しい症例が増加し、化学放射線治療(放射線治療と化学療法の併用)を行う機会が増えてきています。効果のある治療ではありますが、食道にがんが残る(遺残)、一旦効果があったものの再発してしまうこともあります。このような遺残再発食道がんに対しては、従来は化学療法、または外科手術を行います。しかし化学療法では効果に限りがあること、また外科手術はリスクが高まるため、それら弱点を補う治療としてPDTが導入されました。この治療は対象者が、化学放射線療法後の遺残再発食道がん患者に限られていますが、従来サルベージが困難であった患者さんに対して、がん根治への新たな一歩となるよう、普及に努めていきます。PDT治療を実施できる施設は少なく、現時点で中国地方においては当院だけです。
 
*病院のホームページにも詳細が記載してあります。ご参照ください。
https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/introduction/3105/3106/21192.html

〈化学放射線療法後の局所再発に対するPDT症例〉

PDT治療前
PDT治療中
PDT治療後3年 再発なく経過

当科では早期消化管がんの分子イメージングに取り組んでいます。その中で、光感受性物質を用いてがんを早期発見することを目指した光線力学的診断PDDに注目しています。PDDは検査前に光感受性物質である5-ALAを内服して、数時間後に内視鏡で観察すると病変が蛍光します。これによって早期がんの超早期発見が容易になることを期待しています。当科では全国に先駆けてその特定臨床研究に取り組んでおり、軟性内視鏡による消化管腫瘍PDDの有効性を検証すべく我々の挑戦が続いています。

〈早期胃がんに対するPDD症例〉

通常の内視鏡観察
PDD観察
蛍光によって病変認識が明瞭となる
切除標本PDD観察
病変が紫色に蛍光される